企業が持続的に利益を上げ続けるには、「どこで価値を創出し、どう収益に結びつけるか」を体系立てて設計する必要があります。こ
れは、バリューチェーン(価値連鎖)全体を見渡し、ビジネスのしくみを構築する作業です。
本稿では、複雑適応系の視点を交えながら、価値創出のプロセスと収益モデル(利益を上げる仕組み)について考えてみましょう。

まず、自社の事業活動をざっくりと「企画→生産→販売(マーケティング)」といった大きな流れに分解してみます。
それぞれの段階で付加価値が生まれるポイントがあります。
企画段階では市場や顧客ニーズを洞察し適切なコンセプトを打ち立てること、生産段階では品質とコストを最適化すること、販売段階では顧客との関係性を築き需要を喚起すること、などです。
自社の強みがどの段階にあるかを見極め、その部分をさらに強化するのが一つの戦略です。
同時に、弱い部分は外部パートナーに委託するなど価値連鎖全体の最適化も検討すべきです。

複雑系の視点では、企業を取り巻くサプライチェーン全体がひとつの適応システムです。
自社だけでなく、仕入先や販売チャネルとの連携(あるいは競争)によっても最終的な価値は左右されます。
したがって、部分最適ではなく全体最適を意識し、ネットワーク全体で価値創出力を高める発想が求められます。

次に、収益モデルについてです。
簡単に言えば「どうやってお金を稼ぐか」の仕組みです。
一口に利益と言っても、その裏には様々なパターンがあります。
たとえば、一回売り切り型のモデルもあれば、サブスクリプションのように継続課金するモデルもあります。

複雑系で考えると、収益モデルの違いは企業の適応戦略の違いと言えます。
定期課金モデルは顧客との長期関係を前提としており、その維持には顧客満足の継続的な創出が不可欠です。
一方、単発販売モデルでは常に新規顧客を獲得し続けなければなりません。
このように、選んだ収益モデルによって企業活動全体のダイナミクスが変わります。
自社の業界特性や顧客行動パターンに合ったモデルを選ぶことが重要ですが、さらに踏み込めば複数のモデルを組み合わせることも競争優位につながります。
例えば、基本サービスは安価で提供し追加機能で課金する(フリーミアムモデル)とか、ハードウェアを安く売って消耗品で稼ぐ(プリンターとインクの関係)など、一種類のモデルに依存しないことで市場変化に柔軟に対応できます。

ここで複雑適応系的な考え方として、探索と搾取(Exploration & Exploitation)のバランスが挙げられます。
現行の収益モデルで効率よく利益を上げる(搾取)ことと、新しい収益源を模索する(探索)ことを両立させるべきだという考えです。
企業は往々にして今うまくいっているモデルに固執しがちですが、市場環境が変わればそれも陳腐化する可能性があります。
そこで、現在のビジネスで収益を上げつつ、将来を見据えて新モデルの実験を行うような組織的二面性が重要です。
例えば、既存事業部とは別に新規ビジネス開発チームを設け、小規模な実験的サービスをローンチしてみる、といったことです。小さな試みの中から予想外に収益性の高いモデルが創発することもあります。

最後に、価値創出から収益獲得までの流れ全体を絶えず見直す習慣を持つことが大切です。
市場や技術が変化すれば、バリューチェーン上で強化すべきポイントも変わりますし、適した収益モデルも変わりえます。
定期的に「今、我々はどの部分で顧客に最も価値を提供し、それをどうお金に変えているか」を問い直し、必要に応じてビジネスモデルを再構成する柔軟性が、連続的競争優位を支えるでしょう。
複雑な環境では、一度決めた設計図に固執せず、走りながら書き換えるくらいの軽やかさが求められるのです。